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    【や】破れかぶれのダンディー【い】

    僕の友人に無頼な奴が一人いる。
    僕は彼のことをこっそり、破れかぶれのダンディーと呼んでいる。
    このダンディー氏は殺風景な部屋に住んでいて、その部屋には布団とコップしか置いていない。イスも机も冷蔵庫もない。
    口数の少ない奴だが頭の回転が早く博識で、何を訊ねても簡潔に答えてくれる。ユーモアも洗練されている。
    仕事は何をしているのか判然としないが、金離れは良く顔も広い。
    また、非常に美しい容姿をしていて、毎回のように違う女性を連れている。

    しかし、彼は破れかぶれだ。その言動は極めて破滅的だ。
    人生には何一つ期待していない。
    冷笑的で自身を粗末に扱っている。
    ところで先日、そんな彼に「奢るから」と誘われて飲みにいった。
    彼は背の高い派手な顔立ちの女性を連れていた。
    「本当は、君と二人で飲みに行こうと思ったのだけど」と申し訳なさそうだった。
    店に入り、暫くとりとめのない会話が続いた。
    途中で僕はトイレに立ち、何気なく鼻唄を歌いながら席に戻った。
    「その歌は何て歌だい?」と彼にきかれ、僕は「“魔法を信じるかい?”って曲だよ」と答えた。
    「“魔法を信じるかい?”か。いい曲名だな」
    意外な反応だった。
    からかわれているのかとも思ったが、彼はいたって真面目な様子だった。

    それから彼は珍しく長い独白をした。

    「人生や運命はコントロール出来ない。だが、魔法が扉を叩くのを俺は待っているんだ。少々待ちくたびれてしまったけどね。
    「魔法なんて馬鹿馬鹿しいと思うだろ? 案外そうでもないのさ。
    「子供の頃、親父が言っていたんだ。扉を叩かれたってね。で、親父は扉を開けて出ていった。外に行っちまった。
    「おかげで俺の親父には質量がないのさ。自慢の親父だよ。
    「それ以来、俺は待っている。魔法が扉を叩くのをね。
    「人生になんて何も期待しちゃいない。ただ、それでもこうして生きているのは、扉を叩く音が聴こえてくるのを待っているからなのさ。」
    彼の独白の間中、彼が連れてきた女性はクスクス笑っていた。
    独白が終わると、「あなたにもそんな夢見がちな冗談が言えるのね」と微笑んだ。
    「いいや、冗談なんかじゃない。君にはわからないだろうけどね」
    彼の声色は少し冷たかった。
    それから僕の方へ目を向け、「君にはわかるかい?」と呟くように言った。
    僕は何と答えるべきか迷い黙ってしまった。

    帰り道、月が出ていた。
    あまり綺麗な月ではなかった。
    そんな月を眺めながら僕は、昔何かが扉を叩く音を聴いたのを思い出した。
    それは魔法ではなかったが、似たもののように思う。
    出来ることなら今度は、魔法にも扉を叩いて欲しいものだ。

    (秋山)
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